静岡県静岡市の土地家屋調査士法人駿府合同事務所です。
商品の説明
「使われなかった人生」とは何だろう。それは、いまここにある自分の人生でなく、もう1つの可能性として「ありえたかもしれない人生」にほぼ等しい。しかし、それら2つの言葉の間には微妙な違いがある。「ありえたかもしれない人生」には手の届かない夢といった意味合いがあるが、「使われなかった人生」には具体的で実現可能な人生という意味が込められていると、著者は言う。ほんのちょっとした決断や選択で、手に入れられなかった人生。
著者は、歳をとるにしたがって、いつの間にかそんな「使われなかった人生」を映画の中に探し求めるようになったという。ここに収められた30編の映画時評と映画にまつわるエッセイ2編では、いわゆる強くて格好いいヒーローやヒロインが主人公の映画は取り上げられていない。
スクリーンを見つめる著者の目に留まるのは、目の前にいる少年の才能にかつての自分を投影した中年女性であり(「出発するための裏切り」)、異国の町で自らを覆っていた殻を破った女性であり(「天使が砂漠に舞い降りた」「父に焦がれて」)、かつて恋心を抱いた女性と再会した初老の男(「飛び立つ鳩を見送って」)であったりする。彼らにとって、「使われなかった人生」は未来と同じ重みを持っている。著者は、そんな彼らを静かに見つめている。ときに冷静すぎるほどの抑制された筆致をもって。(文月 達)
土地家屋調査士法人 駿府合同事務所